虚血性腸炎とは
虚血性腸炎は、大腸の粘膜に障害が起こり、炎症によって粘膜のただれや潰瘍などが生じる病気です。大腸に栄養を供給する血管の血流が阻害されることによって引き起こされます。一般的に、左側の腹部から下腹部にかけて、激しい痛みを感じることがあります。
痛み・症状
虚血性腸炎は、主に3つの症状が現れます。
- 左側腹部から下腹部辺りの痛み
- 下痢
- 血便
左下腹部に急激な痛みを覚えた後、下痢と一緒に血便が出ます。大腸粘膜に炎症や損傷が起こったことで、腸管壁から粘膜が剥がれて血便として現れます。その他に、吐き気、嘔吐、冷や汗などの症状を伴うことがあります。
原因
虚血性腸炎の主な原因は、以下の通りです。
便秘
便秘によって便が腸内に長く滞留することで、腸管壁が持続的な圧力によって伸張される状態となります。この圧力により、血管が圧迫されて血流が阻害され、虚血性腸炎が引き起こされます。
ストレス
ストレスが原因となって虚血性腸炎を引き起こすことがあります。最近ではストレスが原因の虚血性腸炎が増加傾向にあります。日常生活におけるストレスは上手に解消することが重要です。
食生活・生活習慣の乱れ
暴飲暴食や高たんぱく・高脂肪食、運動不足など食事習慣や生活習慣の乱れが原因で虚血性腸炎を起こすことがあります。睡眠不足やストレスも原因となるため注意が必要です。
動脈硬化
動脈硬化で大腸の血管が詰まり虚血性腸炎を引き起こすことがあります。このため、高血圧や糖尿病、脳血管障害、心疾患、腎臓病など、動脈硬化がある方は生活習慣の改善や適切な治療などで早急な対応が必要です。
腸閉塞(イレウス)にご注意下さい
病気が進行し、潰瘍がさらに深くなると大腸内腔が狭くなって腸閉塞を起こすことがあります。症状を繰り返す場合や重症の場合は、腸管壁の狭窄を改善するために手術治療を行うこともあります。
治療
一過性の虚血性腸炎の場合は、腸を休ませることを優先します。まずは絶食し、安静に過ごしながら症状が治まるのを待ちます。脱水に注意しながら、必要に応じて点滴を行います。症状が落ち着いてきたら少しずつ回復食から始めます。一般的には、約1~2週間程で回復します。重症の場合は、抗生物質投与を行うことがあります。
虚血性腸炎の治療は、虚血部分の解消と動脈硬化の改善、動脈硬化を招く疾患の再発防止を行います。特に、生活習慣病が大きく影響するため、食事習慣をはじめとする生活習慣の改善を行います。
虚血性腸炎の予防・治療後と予防のための食事
予防のための食事
虚血性腸炎は便秘が大きく関与しています。まずは便秘を予防するために食事習慣や運動習慣を改善していきます。食物繊維を豊富に含む食品を意識して摂取するなど、食事に注意しましょう。食物繊維には、水に溶けやすい水溶性食物繊維と、水に溶けにくい不溶性食物繊維があります。水溶性は便秘を解消し腸内環境を整えるのに有効で、不溶性は腸の蠕動運動を促します。
治療後の食事
まずは数日間絶食します。整腸剤を服用しながら、水分補給は経口補水液やポカリスエットなどのスポーツドリンクで行います。治療後は、少量ずつ食事を開始していきます。消化の良いものを心がけ、食物繊維の多い食材は避けてください。